現場から始めるAI駆動開発——GMOクラウドECが「個人活用」から「組織標準」へ踏み出す
開発組織が「設計者」へシフト。チームが自ら試し、知見を積み重ねるAI活用の取り組み

01. AI駆動開発を進める方針
生成AIの急速な進化は、ソフトウェア開発の現場に根本的な変化をもたらしています。私たちは、この変化を「開発組織を進化させる大きな機会」と捉え、AI駆動開発(AI-Driven Development / AIDD)を開発スタンダードとして推進していく方針を定めています。これにより、EC事業者への負担軽減と売上の向上を実現するECシステムの提供を、さらなるスピード感と安定感と共に実現していく活動となります。
その推進において大切にしていることがあります。
「まず試す。効果を確かめる。組織に広げる。」
——特定のメンバーやチームに閉じたノウハウにせず、現場から生まれた知見を組織全体の資産にしていく。
トップダウンで「このツールを使え」と指示するのではなく、各チームが自分たちの工程やスタイルに合ったAIツールを選び、実際に使いながら効果を確かめ、それをチーム横断で共有していく——この「ボトムアップ型」のアプローチを推進の柱として位置づけています。
この試みは開発・SRE・企画・品質保証の各チームで試行・共有が始まっており、工数削減率50%超・コード自動生成率70〜80%という成果が、現場のリアルな記録として積み上がっています。
この結果を組織全体にリアルタイムで還元し続けていくことを目標としています。
02. GMOクラウドECの考えるAI駆動開発とは
AI駆動開発とは、単に「AIツールを使って開発する」ことではありません。GMOクラウドECが目指すAI駆動開発の定義はこうです。
AI駆動開発(AIDD)とは:
企画・要件定義・設計・実装・テスト・SRE・保守に至る開発サイクルの全工程において、AIを「補助ツール」ではなく「開発の主体的な担い手」として組み込み、
人間はAIが担えない意思決定・品質判断・価値設計に集中する開発スタイル。
重要なのは「人間の作業をAIに置き換える」という発想ではなく、「AIが担う領域を明確に設計し、人間の力を本来最も必要とされる場所に集中させる」という思想です。開発者はコードを書く作業から解放され、「なぜ作るのか」「何を実現すべきか」という本質的な問いに向き合える環境づくりを進めています。
ツールを縛らない「マルチAI」という発想
GMOクラウドECはあえて「全社統一AIツール」を設けない方針をとっています。チームや工程の特性に応じて、最も効果的なツールを選択・組み合わせる「マルチAIアプローチ」を採用しており、現在チームが活用しているツールは6種類以上にわたります。
- ・GitHub Copilot:実装・設計書生成・PRレビュー支援
- ・Claude Code:UT自動生成・コーディング高速化
- ・Gemini(Google):ログ解析・エラー探索/処理フロー・大容量ドキュメント読み込み
- ・ChatGPT:企画・要件定義のたたき台作成・アイデア展開
- ・Google AI Studio:UIモックアップ・仕様生成
- ・Cursor:既存コードの仕様確認・リファクタリング支援・ソース解析・不具合調査
- ・NotebookLM:会議議事録の蓄積・組織ナレッジの即時参照
これらのツールは互いに「競合」するものではなく、連携することで最大の効果を発揮します。「ChatGPTで要件を展開 → Google AI StudioでUIモックを作成 → GitHub Copilotで実装 → Geminiでエラー箇所の探索/処理フロー把握」といった複数ツールを横断する開発フローが、各チームに自然に定着しつつあります。
03. GMOクラウドECのAI駆動の知見を活かします
GMOクラウドECのAI駆動開発において重視しているのは、「導入した」という事実ではなく、「現場で試して、効果を言語化し、組織に還元し続ける」というプロセスです。
知見が循環する仕組みを目指して
① 現場チームがAIツールを試す
② 効果・手応えを記録・言語化する
③ 社内ナレッジとして横展開する
④ 他チームが応用・改良する
⑤ さらに深い活用知見が蓄積される
この循環によって、GMOクラウドECのAI活用は「個人の工夫」にとどまらず、「組織の開発力」へと育てていくことを目指しています。NotebookLMを活用した議事録の蓄積や仕様参照の習慣化も、このナレッジ循環を支える取り組みのひとつです。
また、AIツールへの習熟度や活用ノウハウは、EC業務に特化した深い業務知識と組み合わさることで初めて高い精度を発揮します。長年のECプラットフォーム開発で培ってきた技術・業務知識の蓄積が、GMOクラウドECのAI駆動開発を土台から支えています。
04. GMOクラウドECが目指すAI駆動開発の全体像と取り組みの内容
AI駆動開発の対象は特定の工程に限りません。GMOクラウドECは、開発サイクルを構成するすべてのフェーズでAIを機能させることを目指しており、各工程での取り組みを順次展開・深化させています。

企画・要件定義フェーズ
要件の概要をAIに入力することで、考慮点・運用内容・開発要件の洗い出しを支援させる取り組みを進めています。曖昧な内容や決め忘れなどの可視化を行い、設計書のたたき台生成やUIモックアップ作成への活用も広げており、後工程での手戻りリスクの低減も視野に入れています。
設計書作成フェーズ
実装コードや修正内容をAIに読み込ませて設計書を自動生成する「コードファースト設計書作成」の確立を進めています。仕様書のない既存実装のリバースエンジニアリングへの活用も試みており、「AIが生成した草稿を人間が確認・手直しする」ワークフローへの移行を目指しています。
実装・コーディングフェーズ
複数のAIツールを連携させ、コードの大部分をAIに生成させる体制づくりを進めています。現在、AIによるコード自動生成効率化を目指しており、エンジニアが生成コードの意図との整合確認・品質担保に集中できる環境整備を推進しています。
PRレビュー・コードレビューフェーズ
ソースコード差分・既存実装・設計書の三点セットをAIに提示し、実装と仕様の対応漏れや誤りを自動検出する運用を推進しています。AIによる一次チェックを定着させることで品質の一定以上に保ち、レビュワーがビジネスロジックの妥当性確認という本質的な判断に集中できる体制を整えていきます。
テスト(UT・結合試験)フェーズ
テストケースを提示するだけでテストコード・テストデータまでAIが生成できる環境を整備しています。さらに、実装前にE2Eテストシナリオを設計・実行することでデグレを自動検知する仕組みの構築も進めており、テスト工程全体のAI活用を深めていく方針です。
SRE・保守フェーズ
CIやAPIエラー発生時にログをAIに渡してエラー原因と処理フローを即座に把握できる運用を推進しています。SREツールの改修・新規作成にもAIを積極的に活用しており、保守工数の大幅な削減を目指した取り組みを継続しています。
工程別AI活用の取り組み一覧
以下は現在進めている各工程でのAI活用の取り組み方針をまとめたものです。
| 活用工程 | 担当チーム | 主な活用ツール | 取り組みの方針 |
| 企画・要件定義 | 企画・PdMチーム | ChatGPT Google AI Studio |
要件・考慮点の洗い出しとUIモック生成を自動化 |
| 設計書作成 | 実装チーム | GitHub Copilot
Cursor |
・コードから設計書を自動生成する草稿ファースト化
・ソースコード解析 |
| 実装・コーディング | 実装チーム | Gemini + GitHub Copilot
Claude Code Cursor |
・コード自動生成効率化を目指したフロー確立
・UT含むコーディング工程へのAI組み込み推進 ・Vue、React、HTMLのコード生成 |
| PRレビュー | レビューチーム | GitHub Copilot
ChatGPT Cursor |
仕様との対応漏れをAIが一次検出する運用を整備 |
| 結合試験・開発 | 実装チーム | GitHub Copilot | E2Eテスト自動化による品質担保体制の構築 |
| SRE・保守 | SREチーム | GitHub Copilot
Gemini Cursor |
・ツール改修 ・新規作成への積極的なAI活用 ・ログ解析エラー特定 |
05. まとめ
GMOクラウドECのAI駆動開発は、「ツールを試験導入した」という段階から、「組織全体の開発スタンダードとして根付かせる」という次のステージへと移行しつつあります。
- ・ 全開発工程(企画〜保守)へのAI組み込みを推進中
- ・ AIによるコード自動生成効率化を目指したフローを整備
- ・ 多数のAIツールをチームが選択・組み合わせて活用
- ・ 現場の知見を「試して・記録して・横展開する」サイクルを構築
- ・ エンジニアの役割を実装者から設計者・品質担保者へシフトさせる
AI駆動開発を通じてGMOクラウドECの開発組織が目指しているのは、単なる効率化ではありません。エンジニアが「なぜ作るのか」「何を実現すべきか」という本質的な問いに向き合い続けることができる組織になること——
それがこの取り組みの根底にある思想です。
この開発力の進化は、GMOクラウドECを利用するEC事業者への提供価値の向上にも直結します。加速する市場の変化や事業者ニーズに対して応えるための開発体制の実現を進めており、
- ・ 新機能、改善のリリースサイクルの大幅短縮
- ・ プラットフォームの品質・安定性向上
- ・ 障害・問い合わせへの対応スピード向上
- ・ プラットフォームへの高品質AI機能の実装
これらの直接的なメリットの実現を通じて、EC事業者様の市場競争力強化と、業務効率化といった事業成長にも貢献して参ります。
06. 今後の展開について
現在進めているAI駆動開発の取り組みは、今後さらに以下の方向へと発展させていきます。
開発組織のさらなる進化
- ・各チームのAI活用ノウハウを体系化し、新メンバーのオンボーディングへ統合
- ・生成AIを活用した開発プロセスの自動化・CI/CDパイプラインへの組み込み
- ・「AIを前提とした設計」を標準とした次世代アーキテクチャへの移行
GMOクラウドECへのAI機能実装
開発組織のAI活用力を、プロダクトそのものへのAI機能実装にも活かしていきます。
- ・生成AIを活用した商品説明文・メルマガコンテンツの自動生成機能
- ・AIによるパーソナライズレコメンデーションエンジンの強化
- ・AIカスタマーサポートの高度化・業務効率化支援機能の拡充
- ・売上予測・在庫最適化へのAI活用拡大
開発チームのAI活用力の蓄積が、プロダクトのAI化を加速させる——この好循環を意識しながら、GMOクラウドECが目指す「AI時代のECプラットフォーム」の実現を進めていきます。
07. GMOクラウドECとは
GMOクラウドECは、GMOメイクショップ株式会社が提供するECサイト構築・運営プラットフォームです。スタートアップから大手企業まで、幅広いEC事業者のオンラインビジネスを支援しています。
- ・豊富な導入実績に裏付けられた安定稼働・高セキュリティ基盤
- ・ECビジネスの成長フェーズに合わせた柔軟な機能拡張
- ・マーケティング・受注・在庫・物流をワンストップで管理できる統合EC環境
- ・AI駆動開発による継続的な機能改善と、プロダクトへのAI機能実装
GMOメイクショップは、AI駆動開発で培った技術力と組織力を武器に、GMOクラウドECをEC事業者にとってより高速・高品質・高付加価値なプラットフォームへと進化させ続けます。
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GMOメイクショップ株式会社 GMOクラウドEC事業本部
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