- 最終更新日: 2025.11.14
- 公開日:2023.04.27
EC販売管理システムとは?ERPと一元管理の違い、エンタープライズ企業が選ぶべきクラウドシステム比較

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目次
ECにおける「販売管理システム」とは?2つの違いを理解する

EC事業における「販売管理システム」とは、商品の受注から在庫引当、出荷、売上計上までの一連の流れを管理する仕組みのことです。しかし、ECシステムの選定現場では、その目的によって大きく以下の2種類に分類されます。まずはこの違いを明確にしておきましょう。
- EC一元管理システム(OMS):
楽天市場、Amazon、自社サイトなど「複数のECモール」の受注・在庫・商品データを統合して管理するツールです。主にWeb上の店舗運営効率化に特化しています。
(例:ネクストエンジン、TEMPOSTARなど) - 基幹システム(ERP)における販売管理:
ECだけでなく、実店舗のPOSデータ、卸売、仕入れ、会計(経理)まで、企業全体の「お金とモノの流れ」を一元管理するシステムです。
(例:キャムマックス、NetSuiteなど)
本記事では、これら2つのシステムが現代のEC運営でどのように機能するか、特にクラウド型システムを導入するメリットと、企業の成長フェーズに合わせた選び方を解説します。
クラウド型販売管理システムの主な機能

現代のEC運営において主流となっている「クラウド型」システムは、インターネット環境さえあれば場所を問わずアクセスできる点に加え、外部サービスとのAPI連携(データ自動連携)が容易である点が最大の特徴です。
1. 受注管理機能(マルチチャネル対応)
各ECモールに入った注文データを自動で取り込みます。単に取り込むだけでなく、「あす楽」「Amazonプライム」などの配送指定や、「ギフトラッピング希望」「初回購入者」などの条件に合わせて、ステータスを自動で振り分ける機能が重要です。
2. 在庫管理機能(リアルタイム同期)
「A店で商品が売れたら、B店とC店の在庫数も瞬時にマイナスする」機能です。これにより、在庫がないにもかかわらず注文を受けてしまう「売り越し」を防ぎます。高度なシステムでは、実店舗の在庫データともリアルタイムで連動可能です。
3. 購買・発注管理機能
在庫が設定した数値を下回った際にアラートを出したり、自動で発注伝票を作成したりします。過去の販売実績データに基づいた発注予測を行うことで、過剰在庫を防ぎ、キャッシュフローの適正化に貢献します。
大手・中堅EC企業がシステムを導入するメリット

月商数千万円〜数億円規模のエンタープライズ企業や、その規模を目指す成長企業にとって、販売管理システムの導入は単なる「業務削減」以上の意味を持ちます。
実店舗とECの融合(OMO)の実現
クラウド型の販売管理システムを導入することで、実店舗とECサイトの在庫・顧客情報を統合できます。「ネットで注文して店舗で受け取る(BOPIS)」といったOMO施策や、店舗にある在庫をEC用の在庫として引き当てるなど、販売機会の最大化が可能になります。
ヒューマンエラーの根絶と属人化の解消
注文数が増えると、手動でのCSVアップロードや目視確認は限界を迎えます。システムによる自動連携を導入すれば、人為的なミス(発送漏れ、送り状の貼り間違い)を仕組みとして防ぐことができます。また、特定のベテランスタッフしか処理できない複雑な業務フローをシステムで標準化できるため、組織としての拡張性が高まります。
経営判断のスピードアップ
各モールの売上データがリアルタイムで集約されるため、月次を待たずに日次レベルでの状況把握が可能になります。「どの店舗で、何が、どれくらいの利益率で売れているか」を即座に分析できるため、迅速なマーケティング投資や在庫処分の判断に役立ちます。
失敗しないEC販売管理システムの選び方 4つの視点

多くのシステムが存在する中で、自社に最適なものを選ぶための基準を解説します。特に規模が拡大している事業者は、以下のポイントを重視してください。
1. 既存システムとの「API連携」と「拡張性」
すでに社内で利用している「WMS(倉庫管理システム)」や「会計ソフト」、「CRM(顧客管理ツール)」と自動連携できるかを確認しましょう。CSVによる手動連携ではなく、APIによるリアルタイム連携が可能であれば、業務の自動化レベルは格段に上がります。
2. トランザクション耐性とスケーラビリティ
「楽天スーパーSALE」や「Amazonプライムデー」など、注文が殺到するタイミングでもサーバーがダウンせず、処理遅延が起きないかを確認します。導入実績を確認する際は、自社と同規模、またはそれ以上の規模の企業が利用しているかをチェックすると安心です。
3. カスタマイズ性とサポート体制
独自の業務フロー(例:名入れ商品、セット組み販売、特殊な同梱物ルールなど)に対応できるカスタマイズ性があるかも重要です。また、導入時に専任のコンサルタントがつくか、チャットサポートのレスポンスは早いかなど、サポートの手厚さも運用定着の鍵を握ります。
4. 費用対効果(従量課金 vs 定額制)
料金体系は主に「受注件数課金(従量制)」と「定額制」に分かれます。利益率が低い商品を大量に販売するモデルの場合、件数課金はコスト圧迫の要因になります。現在の受注数だけでなく、売上が2倍になったときのコスト感もシミュレーションしておきましょう。
【比較】ECサイトにおすすめの販売管理・一元管理システム
ここからは、EC事業者の規模や目的に合わせて、おすすめのシステムを紹介します。
【中堅・エンタープライズ向け】拡張性と連携重視
カスタマイズ性が高く、月間受注数が多い企業や、将来的に大規模展開を狙う企業に適したシステムです。
TEMPOSTAR(テンポスター)

エンタープライズや中・大規模事業者から高い支持を得ているASP型システムです。
「カスタマイズ可能なASP」を謳っており、個別の業務フローに合わせた調整が得意です。在庫管理の更新頻度が高く、商品ごとの引当設定など細かなルール設定が可能です。Yahoo!オークションを含めた多店舗展開に強みがあります。
- 運営会社: SAVAWAY株式会社
- 特徴: 高度なカスタマイズ性、大規模店舗の実績多数
ネクストエンジン

業界最大級の導入実績を誇るプラットフォームです。
最大の特徴は「アプリ」による機能拡張です。必要な機能をスマホアプリのように追加できるため、小さく始めて大きく育てることができます。対応モール数も非常に多く、Hamee株式会社から分社化したNE株式会社が開発・運営を行っているため、現場目線の機能改善がスピーディーに行われています。
- 運営会社: NE株式会社
- 特徴: 豊富なアプリによる拡張性、活発なユーザーコミュニティ
CROSS MALL(クロスモール)

アパレルや雑貨など、SKU(色・サイズ展開)が多い商材を扱う企業に人気のシステムです。
商品登録機能が使いやすく、セット商品や属性管理が直感的に行えます。実店舗管理システムとの連携実績も豊富で、中堅規模のOMO施策にも対応可能です。
- 運営会社: 株式会社アイル
- 特徴: SKU管理・商品登録が使いやすい、実店舗連携
【基幹システム・ERP統合型】企業全体を一元管理
ECだけでなく、卸・実店舗・経理まで含めて管理したい場合に適しています。
キャムマックス

中小〜中堅企業向けに特化したクラウドERPです。
「EC一元管理」と「販売管理(基幹システム)」の両方の機能を持ち合わせています。ECの受注だけでなく、財務会計や実店舗POSとも連携し、会社全体のデータを一つのデータベースで管理できます。
- 運営会社: 株式会社キャム
- 特徴: ERP機能を搭載、財務会計まで一気通貫
【物流・倉庫連携特化】自動出荷を極める
倉庫業務のアウトソーシングや、出荷スピードを最優先する場合に適しています。
LOGILESS(ロジレス)

「EC自動出荷」に特化したシステムです。
受注管理(OMS)と倉庫管理(WMS)が一体化しており、一定のルールに合致した注文を、人の手を介さずに倉庫へ出荷指示します。土日祝日の出荷対応や、配送リードタイムの短縮を実現したい企業に最適です。
- 運営会社: 株式会社ロジレス
- 特徴: OMSとWMSの一体型、自動出荷率が高い
【初心者・小規模向け】使いやすさとコスパ重視
初めてシステムを導入する方や、操作の簡単さを重視する方に適しています。
助ネコ

「使いやすさ」に定評があるシステムです。
画面デザインが直感的で、専門知識がないスタッフでもすぐに使いこなせます。おもてなしを重視した丁寧なサポート体制も特徴で、少人数運営の店舗におすすめです。
- 運営会社: 株式会社アクアリーフ
- 特徴: 初心者に優しいUI、手厚いサポート
まとまるEC店長

コストパフォーマンスに優れたシステムです。
受注件数や店舗数に関わらず、商品登録数に応じた料金体系が特徴。多店舗展開しているが、SKU数がそこまで多くない店舗にとっては、ランニングコストを抑えて運用できます。
- 運営会社: 株式会社ブランジスタソリューション
- 特徴: 定額制に近い料金体系、導入のしやすさ
まとめ:自社のフェーズに合った販売管理システムを選ぼう
販売管理システムは、単なる「事務処理ツール」ではなく、EC事業を成長させるための「基盤」です。
- 成長フェーズ(中堅・大手): TEMPOSTAR、ネクストエンジン、キャムマックスなど、拡張性とデータ連携を重視
- 立ち上げ・小規模フェーズ: 助ネコ、まとまるEC店長など、使いやすさとコストを重視
- 物流課題解決: LOGILESSなどの物流一体型
現状の課題が「入力の手間」なのか、「在庫のズレ」なのか、あるいは「全社的なデータの分断」なのかを見極め、自社の次のステージを支えてくれるシステムを選定してください。多くのツールには無料トライアル期間があるため、まずは実際の操作画面を触ってみることをおすすめします。











