- 最終更新日: 2025.11.26
- 公開日:2022.02.15
【2025年最新・法改正】eKYCとは?「ホ方式」廃止(2027年)とICチップ移行を徹底解説!

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2018年の法改正以来、オンラインでの本人確認(eKYC)は、ECビジネスの成長に不可欠な技術となりました。
しかし今、そのeKYCが重大な転換期を迎えています。
2025年2月、警察庁は「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」の施行規則改正案を発表。これまで主流だった「本人確認書類の画像と顔写真の送信(ホ方式)」が、2027年4月1日をもって原則廃止されることが決定しました。
これは、リユース(古物商)やCtoCプラットフォーム、高額品ECなどを運営する事業者が、ユーザーの「会員登録」や「買取申込」フローの変更を迫られる、極めて重大な決定です。
この記事では、EC担当者が直面するこの大きな変化にどう対応すべきか、eKYCの基礎知識から最新の法改正、そして今後の主流となる「ICチップ方式」まで、2025年11月現在の最新情報に基づき徹底解説します。
目次
そもそも「eKYC」とは?(基礎知識)

まず、eKYCの基本的な定義と、なぜECビジネスで重要なのかを確認します。
1. eKYC(電子的本人確認)の定義
「eKYC」とは「electronic Know Your Customer」の略で、日本語では「電子的(オンライン)な本人確認」を指します。
そもそも「KYC(本人確認)」は、銀行口座の開設、中古品の買取、CtoCサービスでの売上金出金といった取引において、不正利用やマネーロンダリング(資金洗浄)を防止するため、法律で厳格に義務付けられています。
- 関連する法律:
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法): 金融機関やCtoCの決済事業者などが対象。
- 古物営業法: 中古品(古物)の買取を行う事業者が対象。
従来は対面や郵送(転送不要郵便)で行う必要があったこの手続きを、2018年の法改正により、スマートフォンやPCでオンライン完結できるようにしたのが「eKYC」です。
2. 急拡大するeKYC市場
eKYCは、単なる法令対応にとどまらず、急速に市場を拡大しています。
株式会社矢野経済研究所の最新調査(2025年4月発表)によれば、国内のeKYC/当人認証ソリューション市場規模は、2027年度には247億9,100万円に達すると予測されています。(出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3801)
これは、金融や古物商といった法令対応が必須の領域だけでなく、マッチングサービスやシェアリングエコノミーなど、自主的に安全性を高めたいECサービスにおいても導入が拡大しているためです。
【最重要】2027年の法改正:何が変わり、なぜ対応が必要か?

今回の法改正で、EC担当者が最も知るべき核心は「主流だった手法が禁止になる」という事実です。
結論:「ホ方式(画像送信)」の原則廃止
現在、eKYCとして最も広く使われている「ホ方式」が、2027年4月1日をもって原則廃止されます。
- ホ方式とは:
ユーザーがスマホで「運転免許証などの本人確認書類(の画像)」と「自分の顔写真(容貌)」を撮影して送信する方法。手軽なため、多くのECサイトで採用されています。
廃止の理由:深刻化する「なりすまし」の脅威
なぜ、最も普及している「ホ方式」が廃止されるのでしょうか。 それは、技術の進歩によって「画像」だけでは本物かどうかを担保できなくなったためです。
- 精巧な偽造書類の増加:
印刷技術が向上し、目視やAIの画像認識でも見破ることが難しい「偽造された本人確認書類」による不正利用が増加しました。 - AI(ディープフェイク)による脅威:
他人の写真や動画から、本物そっくりに動く偽の顔画像を生成する「ディープフェイク」技術が脅威となりました。これにより、撮影(当人認証)のプロセスですら、なりすましが可能になりつつあります。
今後の対策:偽造困難な「ICチップ方式」への完全移行
これらの脅威に対抗するため、法律が求めるeKYCの基準は、「偽造が極めて困難なICチップ情報を利用する方法」へと移行します。
EC事業者は、2027年4月1日の施行までに、現在「ホ方式」で運用している本人確認フローを、後述する「ヘ方式」または「ロ方式」(いずれもICチップを利用)に切り替える必要があります。
ICチップ移行がEC担当者にもたらす「メリット」と「新たな課題」

この「ICチップ方式」への移行は、EC事業者にとってセキュリティ向上という大きなメリットがある一方、新たな課題も生じさせます。
メリット:不正の徹底排除とブランド保護
- セキュリティの最高レベル化: ICチップの情報は電子的に暗号化されており、偽造が極めて困難です。これにより、不正アクセス、なりすましによる不正購入、盗品の売却などを水際で防げます。
- コンプライアンス対応: 法改正に迅速に対応する姿勢は、企業のコンプライアンス意識の高さを示し、ユーザーや取引先からの信頼(ブランド価値)を守ることに繋がります。
課題:ユーザーの操作ハードルと「離脱率(CVR)悪化」のリスク
最大の課題は、ユーザー側の操作が「ホ方式」より複雑になることです。
- ICチップ読み取り操作:
ユーザーはスマホのNFC機能で、免許証やマイナンバーカードを「かざす」必要があります。この操作に慣れていないユーザーが戸惑う可能性があります。 - 暗証番号の入力:
ICチップ読み取りの際、設定した暗証番号(4桁2種類など)の入力が必要になる場合があります。「暗証番号を忘れた」という理由で、手続きを断念するユーザーが発生するリスクです。 - NFC非対応スマホの問題:
ユーザーがNFC機能を持たない古いスマートフォンを使用している場合、ICチップ方式のeKYCが実行できません。
EC担当者は、セキュリティ強化と引き換えに、会員登録や申込時のコンバージョン率(CVR)が悪化するリスクを認識し、UI/UXの改善や丁寧なカスタマーサポートで対策する必要があります。
今後のeKYC「認証方法」徹底比較(ICチップ対応)

では、具体的にどの方式に移行すればよいのでしょうか。 まず、eKYCが確認する「2つの仕組み」を理解するとスムーズです。
- 身元確認: 提出された書類(免許証など)が本物であり、氏名・住所が正しいか。
- 当人認証: 今、操作している人物が、その書類の本人であるか。
「ホ方式」が廃止されるのは、1の「身元確認」を「画像」に頼っていたため、偽造に対応できなくなったからです。今後の主流は、1を「ICチップ」で行う方式となります。
【廃止予定】ホ方式(画像 + 容貌)
- 内容: 免許証などの画像 + 本人の顔画像を送信。
- ステータス: 2027年4月1日原則廃止。
- 課題: 「身元確認」を画像で行うため、偽造やディープフェイクに弱い。
【今後の主流①】ヘ方式(ICチップ + 容貌)
- 内容: 免許証やマイナンバーカードのICチップ情報 + 本人の顔画像を送信。
- ステータス: 今後の主流。
- 特徴:
- 身元確認: ICチップ情報(偽造不可)で行う。
- 当人認証: 顔画像(ライブネス認証)で行う。
- EC担当者メモ: ユーザーの操作(暗証番号入力が不要な場合もある)とセキュリティのバランスが最も良い方式です。
【今後の主流②】ロ方式(公的個人認証)
- 内容: マイナンバーカードのICチップ情報 + 署名用電子証明書の暗証番号(6桁〜16桁)の入力。
- ステータス: 最も厳格な方法。
- 特徴:
- 身元確認: ICチップ情報で行う。
- 当人認証: 「暗証番号を知っていること」で行う。
- EC担当者メモ: 最も安全ですが、ユーザーが「6桁以上の暗証番号」を覚えている必要があり、離脱率が最も高くなる可能性があります。金融など、極めて高いセキュリティが求められる場合に適しています。
(参考)ト・ワ方式
- 内容: 銀行口座への照会(ト方式)や、少額振込(ワ方式)。
- EC担当者メモ: ユーザーが特定の銀行口座を持っている必要があり、フローがやや複雑になるため、汎用性は「ヘ方式」に劣る場合があります。
【業態別】EC事業者が取るべき具体的な対策

今回の法改正を受け、各EC事業者は以下の対応が求められます。
1. 古物商・リユースEC(中古品買取)
- 影響: 甚大。古物営業法に基づく本人確認で「ホ方式」を採用している場合、2027年4月以降は認められません。
- 対策: 「ヘ方式(ICチップ+容貌)」へのシステム移行が必須です。ユーザー(売主)にICチップ読み取りの操作を分かりやすくガイドするUI/UX設計が、他社との差別化ポイントになります。
2. CtoCプラットフォーム(フリマアプリ)
- 影響: 犯収法の「特定事業者」に該当する場合(例:エスクロー決済や資金移動業ライセンスを持つ場合)、対応は必須です。
- 対策: 該当しない場合でも、プラットフォームの安全性を担保し、不正ユーザーを排除するため、自主的に「ヘ方式」を導入する動きが加速するでしょう。
3. 高額品・レンタルEC
- 影響: 法的義務はなくても、不正利用(チャージバック被害など)のリスクが高い業態です。
- 対策: 不正利用による損害を防ぎ、優良な顧客を守るため、「ヘ方式」の導入を積極的に検討すべきです。
まとめ:EC担当者は「ICチップ移行」への対応が急務
eKYCの世界は、2025年の法改正発表により大きな節目を迎えました。 2027年4月1日の「ホ方式」廃止は、もはや決定事項です。
EC担当者、特に古物商やCtoCプラットフォームを運営する事業者は、「撮影するだけ」の手軽な本人確認から、「ICチップをかざす」という、より安全で確実な本人確認へと、サービスとユーザー体験(UX)の両方を移行させる必要があります。
猶予期間は残りわずかです。ユーザーの離脱を最小限に抑えつつ、安全なプラットフォームを維持するために、自社に最適なeKYCソリューション(ICチップ対応)への計画的な移行を早急にご検討ください。










