• 最終更新日: 2025.11.20
  • 公開日:2022.11.28

EC運営代行とは?運営・運用業務の負荷軽減と売上アップで迅速にEC事業を拡大しよう

EC運営代行とは?運営・運用業務の負荷軽減と売上アップで迅速にEC事業を拡大しよう
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デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環として、EC(イーコマース)事業に着手、あるいは強化する事業者が急速に増えています。

しかし、ECサイトの運営業務は多岐にわたり、非常に負荷が高いのが実情です。特にエンタープライズ企業においては、既存の基幹システムとの連携、大規模な在庫・SKU管理、高度なセキュリティ要件など、事業規模に比例した特有の課題が発生します。

ノウハウが蓄積されるまでの時間的コストや、これら高度な要求に応えられる専門人材の不足が、事業拡大の足かせとなるケースも少なくありません。

そこで強力な選択肢となるのが「EC運営代行」サービスです。

この記事では、まずEC運営に必要な具体的な業務内容を「フロント業務」と「バックエンド業務」に分けて詳細に解説します。その上で、運営代行を導入するメリットと注意すべきデメリット料金体系と費用相場、そして最も重要な「エンタープライズ企業が失敗しないための代行会社の選定ポイント」まで、網羅的に解説します。


EC運営に必要な業務とは?

ECサイトを効率的に運営するには、具体的にどのような業務が必要なのでしょうか。

運営代行の利用を検討するにせよ、まずは業務の全体像を把握することが不可欠です。業務内容を理解することで、自社で対応すべき領域(コア業務)と、外部に委託すべき領域(ノンコア業務)の切り分けが可能になり、総合的なコストや戦略の見通しが立てやすくなります。

自社のリソースで高品質な運用が可能と判断できれば内製化を進めるべきですし、「専門的なノウハウやリソースが不足している」と感じる場合は、EC運営代行の活用が有効な戦略となります。

ECサイト運営の業務は、大きく「フロント業務」と「バックエンド業務」の2つに分類されます。

  • フロント業務(フロントエンド)売上に直結する業務であり、顧客が直接目にする部分の業務が中心です。サイトの企画、商品開発、プロモーション、SEO対策など、事業と顧客を繋ぐ最前線の業務を指します。
  • バックエンド業務(バックオフィス)顧客からは見えない、EC運営を裏側で支える後方支援業務です。在庫管理、受注処理、梱包・配送、問い合わせ対応、アフターサービスなど、運営の基盤となる業務全般を指します。

この二つはEC運営の両輪であり、どちらの機能が滞っても売上の機会損失や顧客満足度の低下に直結します。

それでは、これらの業務について、さらに詳しく見ていきましょう。


4つの主要なフロント業務

フロント業務は、顧客をECサイトに集め、購入へと導くための「攻め」の業務です。

1. 商品の企画・立案

ECサイトの方向性を決定づける、最も重要な業務の一つです。市場のトレンド、競合の動向、自社の強み(優位性)など、様々な視点から分析し、販売すべき商品を企画・開発します。

これは「自社ECサイト」を構築するか、Amazonや楽天などの「ECモール」に出店するかといったプラットフォーム戦略にも大きく左右されます。いずれにせよ、綿密なマーケティングリサーチが商品開発の基盤となります。

2. ECサイトの作成・運営

販売する商品が決まったら、ECサイトという「店舗」を構築・運営します。

「モール出店」の場合は、各モールが要求するフォーマットに従い、商品情報や画像を登録します。

「自社ECサイト」を構築する場合、その手段を決定する必要があります。代表的な選択肢は「パッケージ」と「ASP」です。

  • パッケージEC構築の基本機能を備えたシステムをベースに、自社独自の機能やデザインをカスタマイズして構築します。
    • メリット: 自由度や拡張性が高く、独自の要件や外部システム連携(基幹システム、CRMなど)に柔軟に対応できます。エンタープライズ規模の複雑な要件にも適しています。
    • デメリット: 導入コストや開発期間がASPに比べて大きくなる傾向があります。また、システムのアップデートや保守・運用も自社(または委託先)で行う必要があります。
  • ASP(Application Service Provider)インターネット経由でECプラットフォームの機能をレンタルするサービスです。(SaaS型とも呼ばれます)
    • メリット: 既存の仕組みを利用するため導入コストが低く、迅速に開始できます。システムのアップデートやセキュリティ管理はASP側が行うため、運用負荷が軽減されます。
    • デメリット: パッケージに比べるとカスタマイズの自由度が低く、事業成長に伴う独自の機能拡張が難しい場合があります。

いずれの方式を選ぶにせよ、最も重要なのは「どのようなECサイトにしたいのか」という戦略と要件定義です。

ここで言う「デザイン」とは、単なる見た目だけではありません。サイトを利用するユーザーが目的を達成しやすく、心地よいと感じるサービス体験(UX: ユーザーエクスペリエンス)が極めて重要です。優れたUXは顧客満足度を高め、検索エンジン評価(SEO)にも好影響を与えます。

※UXについてはこちらの記事もご参照ください。

UXの意味とUXに関係するその他の言葉について 〜UXデザイン、UXライティング、CX、UXとSEO〜

3. 在庫の調整、商品の発注

これは売上に直結する戦略的なフロント業務です。倉庫にある在庫は、理論上24時間365日、全世界に向けて販売されています。

  • 需要が高まるタイミングでの在庫切れ(欠品)は、最大の機会損失となります。
  • 逆に、需要を読み誤った過剰在庫は、キャッシュフローを悪化させ、倉庫スペースを圧迫し、税務上も不利になる可能性があります。

需要と供給を正確に予測し、欠品と過剰在庫を最小限に抑えるための在庫調整・発注は、EC運営の収益性を左右する重要な業務です。

4. 販売促進(プロモーション)

どれだけ優れた商品やECサイトを用意しても、顧客に認知されなければ存在しないのと同じです。ECサイトそのものや商品を広く周知するため、プロモーション活動を行います。

Webマーケティングが中心となり、SNS運用、リスティング広告(PPC)、アフィリエイト広告、SEO(検索エンジン最適化)、コンテンツマーケティングなど、手法は多岐にわたります。

これらの施策は、費用対効果(ROI)を厳密に測定しながら、戦略的に実行されるべきです。再現性のあるマーケティング施策によって新規顧客の流入を継続的に確保することが、事業の加速度的な成長に繋がります。


5つの主要なバックエンド業務

バックエンド業務は、フロント業務で獲得した顧客の信頼を確実なものにするための「守り」の業務であり、EC運営の基盤です。

1. ささげ業務と商品の登録

倉庫に商品が入荷した後、ECサイトで販売可能な状態にするための業務です。

ささげ業務」とは、「影(さつえい)」「寸(さいすん)」「稿(げんこう)」の頭文字を取った業界用語です。

  • 撮影: 商品の魅力を伝えるための写真(物撮り、着用画像など)を撮影します。
  • 採寸: 商品のサイズや重量を正確に測定し、情報として掲載します。
  • 原稿: 商品の仕様、特徴、利用シーンなどを説明する文章を作成します。

これらは単なる作業ではなく、顧客の購買決定率(CVR)を左右する非常に重要な業務です。

(参考記事:ささげ業務がECサイトと消費者を結びつける~消費者に対して商品・サービスの魅力を正確に売り込む~

ささげ業務が完了したら、商品をECサイトに登録し、顧客が閲覧・購入できる状態(=陳列棚に並べる)にします。

この際、在庫管理の最小単位である「SKU(Stock Keeping Unit)」の概念が重要です。例えば「Tシャツ、ブルー、Sサイズ」と「Tシャツ、ブルー、Mサイズ」は、顧客にとっては同じ商品ページでも、在庫管理上は別々のSKUとして厳密に管理する必要があります。

(参考記事:SKUとは?~在庫管理を制する者が事業を制する~

2. 商品の受注

顧客から注文が入ったら、システムが注文情報を自動的に処理し、顧客へ注文確認の通知を行います。同時に、出荷指示のために在庫の「引き当て」(在庫の確保)を行います。

ここでシステムエラーや処理ミスが発生すると、誤発送や配送遅延といった重大なトラブルに繋がり、顧客の信頼を大きく損ねます。

3. 在庫の管理

倉庫内にある実際の在庫(実在庫)と、ECサイト上の在庫データが常に一致している状態を維持・管理する業務です。

実在庫とデータに差異(ズレ)があると、在庫があるのに「売り切れ」と表示されて機会損失になったり、逆に在庫がないのに注文を受けてしまい(空売り)、顧客対応に追われることになります。正確な在庫管理は、バックエンド業務の根幹です。

4. 商品の配送(フルフィルメント)

受注情報に基づき、倉庫で商品をピッキング(集め)、検品し、適切に梱包して配送業者へ引き渡します。この一連の流れを「フルフィルメント」と呼びます。

配送は外部業者に委託するのが一般的ですが、配送状況(遅延、破損など)のトラブルはEC運営者の責任として対応する必要があります。

5. アフターケア(カスタマーサポート)

商品が顧客の手元に届いて終わりではありません。使用方法の問い合わせ、返品・交換の対応、クレーム対応など、購入後のフォローアップ(カスタマーサポート)が必要です。

このアフターケアの品質が、顧客満足度(UX)を決定づけ、リピーター獲得に直結します。また、顧客の声(VOC)は、商品やサービスの改善に繋がる貴重な情報源となります。


EC運営代行のメリット

前述したフロントからバックエンドまでの多岐にわたる業務を、すべて自社リソースだけで高品質に実行するのは容易ではありません。そこでEC運営代行を活用するメリットが生まれます。

1. コア業務へのリソース集中

EC運営における定型的な業務や専門的なノンコア業務(ささげ、受注、物流、CSなど)を委託することで、自社の貴重なリソースを「商品開発」や「マーケティング戦略の立案」といった、企業の競争力の源泉となるコア業務に集中させることができます。

2. 最新ノウハウの活用と業務品質の向上

EC運営代行業者は、多くの企業の運営を支援する中で蓄積された最新のノウハウ、専門人材、最適化されたシステムを保有しています。自社でゼロから構築するよりも、迅速に高品質な運営体制を確立できます。

3. 迅速な事業展開と安定化

特に新規でEC事業に参入する場合、運営体制の構築には時間がかかります。運営代行を活用することで、導入ハードルを大幅に下げ、短期間で事業をスタートさせることが可能です。

4. コストの最適化(変動費化)

自社で物流倉庫やコールセンター、専門人材をすべて抱えると、売上規模に関わらず莫大な固定費が発生します。運営代行を利用することで、これらのコストを物量に応じた「変動費」として処理でき、事業リスクを軽減できる場合があります。


EC運営代行のデメリットと導入時の注意点

多くのメリットがある一方で、運営代行の導入にはデメリットや注意点も存在します。これらを理解せず導入すると、期待した成果が得られない可能性があります。

1. コストの発生

当然ながら、委託には費用が発生します。「月額固定費」や「売上に応じた成果報酬」など、料金体系は様々です。自社の売上予測と委託費用が見合っているか、慎重なシミュレーションが必要です。

2. 社内へのノウハウ蓄積の困難さ

業務を丸ごと委託(フルアウトソーシング)した場合、EC運営の実務的なノウハウが自社に蓄積されにくいという大きなデメリットがあります。将来的に内製化を視野に入れている場合、どのような形でノウハウを共有してもらうか、事前に取り決めておく必要があります。

3. 業者への依存とブラックボックス化

特定の代行業者に長期間依存しすぎると、業務プロセスがブラックボックス化し、万が一の契約終了時や内製化への切り替え時に、事業が立ち行かなくなるリスクがあります。

4. コミュニケーションコストの増大

自社と代行会社との間で、情報共有や意思決定のラグ(遅れ)が発生しやすくなります。特にセールやキャンペーン時の迅速な対応(在庫調整、広告出稿など)において、連携ミスが機会損失に繋がることもあります。

5. セキュリティリスク

代行業者には、顧客の個人情報や自社の販売データなど、重要な機密情報を預けることになります。業者のセキュリティ体制が強固であるか、契約前に厳しくチェックする必要があります。


EC運営代行の費用相場と料金体系

導入のメリットとデメリットを把握した上で、次に重要となるのが「費用」です。EC運営代行の費用は、「委託する業務範囲」と「料金体系」によって大きく変動します。

料金体系の種類

  1. 月額固定型業務内容に関わらず、毎月一定の費用を支払う形式です。予算が立てやすい一方、売上が少ない時期でも固定費が発生します。
  2. 成果報酬型ECサイトの売上やコンバージョン数に応じて、一定の料率(例:売上の10%〜20%)を支払う形式です。初期コストを抑えられますが、売上が急増すると費用も高額になります。
  3. 複合型(固定費+成果報酬)月額の固定費に加え、売上に応じた成果報酬を支払う形式です。最も一般的な料金体系の一つです。

業務範囲別の費用目安

【2025年10月時点の相場】

あくまで一般的な相場であり、事業規模(SKU数、受注件数、サイト規模)によって費用は大きく変動します。

委託する業務範囲 費用相場の目安(月額) 主な業務内容
コンサルティング 15万円〜60万円 戦略立案、市場分析、改善提案、レポーティング
サイト運用・更新 8万円〜35万円 商品登録、メルマガ配信、特集ページ作成
マーケティング(広告運用) 広告費の20%程度(+固定費) リスティング広告、SNS広告の運用・最適化
フルフィルメント 従量課金+固定費 ささげ、受注処理、在庫管理、梱包・配送、CS
フル代行(戦略〜実務) 30万円〜100万円以上 上記の業務全般を一気通貫で委託

【エンタープライズ企業向け】失敗しないEC運営代行会社の選び方

費用感を把握した上で、いよいよ選定のフェーズです。特にエンタープライズ企業が代行会社を選ぶ際は、価格の安さだけでなく、自社の複雑な要件に対応できるかを見極める必要があります。

1. 自社と同規模・同業界での実績

最も重要なポイントです。大規模なトラフィック膨大なSKU数多数のモール・カートの併用など、エンタープライズ規模のEC運用実績が豊富かを確認します。自社と同じ業界(アパレル、食品、BtoBなど)の実績があれば、業界特有の商慣習や課題への理解も期待できます。

2. 基幹システム(ERP)やWMSとの連携柔軟性

エンタープライズ企業では、ECの在庫・受注データを、社内の基幹システム(ERP)や倉庫管理システム(WMS)とリアルタイムで連携させる必要があります。代行会社が、これらの既存システムと柔軟に連携できるAPIや開発力を持っているかは必須の確認項目です。

3. 高度なセキュリティ体制

大量の顧客情報(個人情報)や販売データを扱うため、セキュリティ体制は厳格にチェックすべきです。「プライバシーマーク(Pマーク)」や「ISMS(ISO 27001)」などの認証取得は、信頼できる体制の目安となります。

4. 業務範囲の網羅性と専門性(特に物流)

「戦略コンサルは得意だが、物流(フルフィルメント)は下請け任せ」といった業者も存在します。特にエンタープライズの物流は複雑化しやすいため、自社倉庫(または提携倉庫)での高品質な物流オペレーションまで一気通貫で対応できるか、その専門性を見極めます。

5. 報告体制と戦略的な改善提案(コンサルティング)

単なる「作業代行」ではなく、データを分析し、売上向上のための具体的な改善提案(=コンサルティング)を行える「パートナー」となり得るかが重要です。定例会の有無、レポーティングの質、担当者の専門性などを確認しましょう。


EC運営代行サービスの紹介

前述した「選び方」を踏まえた上で、EC運営代行サービスの一例としてGMOメイクショップが提供しているアウトソーシングをご紹介します。

EC運営に必要なすべての業務に対応するアウトソーシング

アウトソーシングは、3つのフェーズ(運用業務・物流業務・コンサルティング業務)に分けてサービスを提供しています。

  • 分析フェーズ:サイト診断
    現状の分析から課題を抽出して、ECサイトの販売戦略の策定をおこないます。ブランドの在り方の再構築が必要な場合、ブランディングの支援もおこないます。
  • 導入フェーズ:サイト制作
    ブランドイメージを重視し、ご要望に沿ったデザインのサイト制作をおこないます。バナーやHTMLメルマガなど、ECサイトの運営に伴い必要となる制作を、個別で対応することもできます。
  • 運用フェーズ:サイト運営代行
    • Web集客
      ニーズが顕在化しているユーザーから、潜在的なニーズのユーザーまで、ショップの課題に沿った集客をおこないます。施策はPDCAを繰り返し、成果の改善につなげます。
    • EC運営
      受注処理、商品登録、物流サポートなど、負担になりがちなECサイトの運用業務を代行します。物流倉庫は提携の倉庫を利用し、在庫をお預かりすることもできます。
    • リアル店舗連動
      事業拡大のためには、リアル店舗との連動が重要になります。ECサイトとリアル店舗の連動施策や、認知度拡大のために、ポップアップショップの出店も可能です。

 

アウトソーシングについて詳しくはこちら: https://www.cloudec.jp/cloud-ec/outsourcing/

まとめ

EC運営代行は、専門家のノウハウを活用し、自社のリソースをコア業務に集中させることで、EC事業を迅速に拡大するための強力な手段です。

ただし、運営代行は「導入すれば必ず成功する」というものではありません。自社の目的(どの業務を、なぜ委託するのか)を明確にし、メリットとデメリット(特にコストとノウハウ蓄積の問題)を深く理解することが不可欠です。

その上で、本記事で解説した「エンタープライズ向けの選び方」を参考に、自社の事業フェーズや規模に合った最適なパートナーを選定することが、EC事業成功の鍵となります。

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    EC News編集部

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