2021.02.26

ECサイトにおける量子コンピュータ活用の可能性 組み合わせ最適化処理で売上アップが期待できる!?

ECサイトにおける量子コンピュータ活用の可能性 組み合わせ最適化処理で売上アップが期待できる!?

ニュースでたびたび話題になるものの、実ビジネスでの活用がなかなか進まない量子コンピュータ。取り扱いが難しいことや現状では不安定なことが主な要因ですが、ECサイトにおいては有効に活用できるのではと期待されています。
今なら競合が少ないブルーオーシャンの状態。そこで今回は、ECサイトにおける量子コンピュータ活用の可能性について、やさしくご紹介します。

 

量子コンピュータの現状


量子コンピュータは、実機の開発が進んできたことと、従来型コンピュータ(古典コンピュータ)の性能向上に限界が見えてきたことから、近年注目されるようになりました。当初は主に研究者向けでしたが、クラウド経由で一般向けに提供され利用になり、ビジネスでの活用も可能になっています。

とはいえ、従来型コンピュータとは扱い方が全く違うため、活用するには知識とノウハウが求められます。難しそうな数式も出てきますので、ある程度の覚悟が必要です。要は簡単ではありません。

では、早々にあきらめたほうがいいのでしょうか。そんなことはありません。ECサイトの運営者は、量子コンピュータの仕組みを理解するのではなく、何に使えて、どのようなメリットがあるのかを知っておくだけで十分だからです。従来型コンピュータの仕組みを知っている人はかなり限られます。でも、量子コンピュータの仕組みを知らなくても、ECサイトは運営できます。そういうことです。

 

 

組み合わせ最適化が現状の得意分野


現在の量子コンピュータは発展途上であり、専門家などが描く完成形にはほど遠い状況です。従来型コンピュータに対して圧倒的な性能差を示すまでには、まだまだ時間がかかります。話題になりがちな“暗号を解読される”という心配も、当面はありません。

このままでは調子コンピュータは使えないということになりそうですが、必ずしもそうとは限りません。現状の量子コンピュータでも活用可能な分野があります。その代表例が「組み合わせ最適化問題を解く」です。

 

日常生活やビジネスの世界では、常に組み合わせ最適化を必要とされるシーンがあります。例えば、お弁当のおかずの組み合わせ。予算はいくらか、どのようなおかずがあるか、食べ合わせはどうか、栄養はどうか、お弁当に入れられるサイズかどうか、などが考えられます。その組み合わせは、天文学的といえるほど膨大な数となり、計算時間も膨大になります。

そこで量子コンピュータです。量子の不思議なふるまいを活用することにより、こうした組み合わせを短時間で計算するのです。

 

リクルートの実証実験が示す可能性


ECサイトでの実証実験例として世界的に有名なのが、リクルートコミュニケーションズの旅行情報サイト「じゃらんnet」での取り組みです。ビジネスでの量子コンピュータ活用という点では、世界初ともいわれました。

じゃらんnetでの実証実験では、利用者が宿泊先を検索したときに、表示するホテルや旅館を量子コンピュータで計算するというものです。通常は検索条件に合ったものを人気順で表示しますが、ホテルに旅館が混じるというように、情報を散らすという処理を組み込んだのです。

実証実験では売上が約1%向上するという成果を上げています。とても大きな成果ですが、残念ながらじゃらんnetでの本番採用には至っていません。その理由は、利用した量子コンピュータはカナダにあり、ネットワーク経由で利用しなければならないため、遅延の問題があります。また、サービス停止が許されないサイトであることから、24時間の稼働保証がないことも本番運用に至らなかった要因の一つになっているそうです。

 

ECサイトではどのように活用できるのか


ECサイトでの活用では、じゃらんnetと同様、検索結果の表示において活用することが有力です。また、レコメンドとして、利用者が表示した商品の関連商品を表示するときにも使えそうです。

じゃらんnetと同様の問題があるのでは? と思うかもしれません。確かにその通りですが、現在では「疑似量子コンピュータ」とでも言うべきシミュレーション環境が整っています。シミュレーション環境で得たノウハウは、そのまま量子コンピュータに適用可能です。まずは、シミュレーション環境を利用してノウハウを積み重ね、量子コンピュータの利用環境が整ったときに移行するということも念頭に置きながら取り組むのが現実的でしょう。

量子コンピュータに取り組む企業はまだ少ないのが現状です。量子コンピュータの活用が一般的になってから取り組むという判断が大勢だと思いますが、それでは時代に乗り遅れてしまうかもしれません。先行してノウハウを蓄積し、来るべき時代に備えませんか。

  • GMOシステムコンサルティング株式会社 量子計算コンサルタント 畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

    金融システムエンジニア、新聞記者、マーケティング担当などを経て、前職よりハードウェアが急激に進化し始めた量子コンピュータの活用に取り組む。なかでもECの分野は組み合わせ最適化を必要とする部分が多いことから、サービス化構想を進めている。

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