• 最終更新日: 2022.04.18
  • 公開日:2022.04.18

EC販売・通販の基礎知識とメリット・デメリットを詳しく解説!

EC販売・通販の基礎知識とメリット・デメリットを詳しく解説!
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ウィズコロナ時代を勝ち抜くために、非対面で取引できるEC販売が注目されています。EC市場の取引額はコロナ禍においても底堅い成長を続けていますが、成長率が高い分、競合が多いのも事実。売るための基礎知識はもちろん、勝つためのノウハウは不可欠です。今回はこれからECサイトの構築を考える方に、ECの基本知識と運営方法について詳しく解説します。

EC(Electronic Commerce)とは?

EC(イーシー)は電子商取引と訳され、インターネット上で売買されるモノやサービス全体のことを指します。楽天市場やAmazonのようなECモールはもちろん、メルカリやラクマのフリーマーケットや、ヤフオクのオークションもECに含まれます。

ECの最大の特徴は、実店舗がなくても個人・法人と取引ができること。そしてインターネット環境があれば、どんな遠隔な地域や国であっても、EC取引が可能です。

EC(電子商取引)の市場規模は年々増加している

令和2年度に経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、物販系のEC市場は前年比で21%増加、デジタル分野のEC市場は14%増加という結果でした。
EC(電子商取引)の市場規模は年々増加している
※画像引用:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html

コロナ禍で外出自粛を余儀なくされる中、多くの消費者がEC取引をおこないました。令和2年度は、サービス分野のEC市場のみが36%と大幅に減っていますが、旅行やチケット販売など、移動をともなうサービスが低迷したためです。実店舗は外出自粛で売上低下する中、EC市場は底堅い成長がみられます。

2020年のEC化率は最大42.97%

ニューノーマル・ウィズコロナ時代は、EC参入を加速度的に普及させる「引き金」となりました。

2020年のEC化率は最大42.97%

※画像引用:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html

上記の表は物販系の分野でECに参入した割合です。「書籍・映像・音楽ソフト」の42.97%を筆頭に、前年比で平均8%のEC化がおこなわれました。なお、物販系はEC販売のカテゴリーで73%の売上を占めています。

ECサイトは自社型とモール型の2種類あり

EC販売をおこなう際、お客様と運営者をつなぐ窓口となるのがECサイト(ネットショップ)です。ECサイトは、自社で構築する「自社ECサイト」と、楽天市場やYahoo!ショッピングなどに出店する「モール型ECサイト」の2種類があります。

自社ECサイト ●オリジナル性の高いECサイトを構築できる
●予算に応じて構築方法を選べる(ASP、パッケージなど)
●低予算(無料~)で構築できる
モール型EC ●モールの集客力の恩恵を得られる
●EC運営に必要な機能がすべてそろっている
●運用コストが高く利益が減る傾向にある

ECサイトをはじめて構築する場合、最初は「モール型EC」からスタートする運営者が多いです。ただモール型ECはランニングコストが高く、デザインと運用面で自由度が低いため、数ヶ月〜数年で自社ECサイトへ移行する流れがよく見られます。

ECの実績・経験が積み上がれば、複数のモールと、自社サイトを運用する「多店舗運営」でコストメリットを活かすこともできます。

グローバル・越境ECの成長率も顕著に伸びている

ECはインターネット環境さえあれば、国境を問いません。国外へ電子商取引することを「越境EC」と呼びますが、毎年右肩上がりで伸びている分野です。

越境EC購入額 伸び率
日本 3,416億円 7.6%
米国 1兆7,108億円 9.9%
中国 4兆2,617億円 16.3%

※引用元:令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf

コロナ禍であっても、米国や中国などの巨大マーケットへ売り込むことができるのが越境ECの大きな特徴です。

オムニチャネル型ECサイトも注目

最近のトレンドとして「オムニチャネル型ECサイト」も注目されています。オムニチャネルとは、オフラインの「実店舗」とオンラインの「ECサイト」を融合させ、それぞれの利点を生かすことで顧客満足度・売上アップを図る戦略です。

たとえば、シューズ販売の「ABC-MART」。同社は国内で1,000店舗以上を運営されていますが、ECサイトも注力しています。ECサイトでシューズを選び購入する際、多くのユーザーは「サイズが合うか?」、「色合いが自分にあうか?」という不安を抱いています。そこで同社は、ECサイトで選んだシューズを実店舗で試着し、気に入れば購入し自宅へ配送するサービスを展開し成果を出しています。

ユーザーにとってバーチャルで「ネット購入する」利便性と、「実物を確かめたい」という要望を融合させることで、顧客満足度を上げることができた事例です。

ECは4つのビジネスモデルがある

ECは「取引する相手」によって区切ると、次の4つのパターンがあります。

種類 意味 ビジネスモデル
BtoC Business to Consumer 企業と一般消費者間での商取引
BtoB Business to Business 企業間でおこなう商取引
CtoC Consumer to Consumer 個人同士でおこなう取引
DtoC Direct-to-Consumer 卸売業者等を通さずに消費者へ直接販売

ECで最も大きな市場は「BtoC」です。個人(Customer)相手に取引する楽天市場やYahoo!ショッピングなどの「モール型ECサイト」や自社サイトも含まれます。「CtoC」はメルカリやフリマのフリーマーケットや、ヤフオクが該当します。個人相手の取引では、1件あたりに発送する商品は少なく、物流が多いのが特徴です。

企業相手(Business)の取引(BtoB)は、1件あたりの発送量が多くなります。ターゲットを個人か企業かを選ぶことで、ECで売る商品や物流が大きく異なります。

EC販売の4つのメリット

ここでEC販売するメリットを見ていきましょう。

メリット1:お客様と非対面で取引できる

新型コロナウイルスの脅威は何年続くのか未知数ですが、コロナ禍で人々の行動・意識が大きく変わりました。総務省の家計調査によると、ECを利用した2人以上の世帯の割合が、2020年5月にはじめて5割を超え、55歳〜64歳の世帯のEC利用が6割近くまで拡大しています。
メリット1:お客様と非対面で取引できる
※画像引用:総務省統計局 ネットショッピング利用世帯の割合の推移(世帯主の年齢階級別、2人以上の世帯、2017年1月~2020年6月)
http://www.stat.go.jp/info/today/162.htm

これまでECと関わりが少なかったユーザー層にも加速度的に浸透し、非対面で取引ができるEC要望は今後も伸びると予想されます。加えて高齢化社会にともない、自宅で取引できるEC需要は今後も拡大していくでしょう。

メリット2:実店舗に比べて投資コストが安い

実店舗の経営で成功するには「物件の立地が8割」と言われますが、駅近など立地の良いテナントほど坪単価が高額です。

ECは仮想空間でお店を構えるため、インターネット環境があれば自宅でも開業することができます。実店舗やオフィスの立地もEC売上に影響はありませんし、ECサイト構築・運用も拘らなければ無料で構築できます。初期費用、運営費用どちらも投資コストは安く抑えられます。

メリット3:24時間365日注文を受けることができる

実店舗は営業時間内しか取引できませんが、ECサイトは無人で稼働し受注できます。また、納期や配送料、支払い方法などの情報もWebサイト上に掲載できますので、営業時間外であってもスムーズな取引ができます。

メリット4:顧客データを集めやすく売上改善が容易

インターネット上のお客様の行動はデータ化され蓄積が可能です。たとえばECサイトの場合は、購入者からのレビューや問い合わせ、要望などの「買うことに関するデータ」が蓄積されます。また、Webページでは、どこから流入して、どのページがよく閲覧されて、離脱するかの「行動データ」が蓄積されます。

これらユーザーデータを分析することで、お客様が欲しい情報や要望を把握しやすくなり、商品改良や潜在ニーズの掘り起こしにも役立ちます。

EC販売の3つのデメリット

EC販売は長所ばかりではなく短所もあります。デメリットを4つ見ていきましょう。

デメリット1:競合が多く勝つために努力と工夫が必要

DX(デジタル・トランスフォーメーション)が注目され、業界を問わず新規参入者が増えています。ECサイトはインターネットという大海に星の数ほど存在します。その中でお客様に選んでもらうためには、プロモーションと差別化が必須です。

ECサイトの流入をGoogleやYahoo!からの検索エンジンから期待するにはSEO対策が必須ですが、成果がでるまで数ヶ月〜1年かかります。競合も日々研究し施策を重ねている中で、勝つためには継続した努力と投資が求められます。

デメリット2:広告の運営ノウハウとコストがかかる

ECサイトの売上をアップさせるには、「ネット広告」が即効性あり有効です。ネット広告はキーワード単位で広告単価を入札し、クリック単位で課金される仕組みです。購買意欲の高いキーワードほど単価が高いため、ある程度まとまった金額の投資は欠かせません。

また、ネット広告において広告費用を抑えながらコンバージョンを上げていくには、継続したデータ分析と研究は大切です。テクニックも必要なので、専任のスタッフを雇うかアウトソーシングする企業も多いです。

デメリット3: 商品の魅力を伝えにくい

ECサイトでは「画像」や「動画」と「テキスト」のみで商品の魅力をアピールしなければいけません。アパレル系で求められる商品の質感や色合いなど表現に限界があります。ECは仮想空間での取引なので、ユーザーが商品や取引に「不安」があると、思うようにコンバージョンは上がりません。

ECサイトの運営に欠かせない基礎知識

国内のECサイトの歴史はすでに20年を超えており、時代の進化とともに構築方法や運用方法はカンタンになってきました。これからECサイトを立ち上げてみたいと検討中の方へ、知っておくべき基礎知識を紹介します。

ECサイト・ネットショップに必要な機能

ECサイトに必要な機能は次のとおりです。

フロント機能 バックエンド機能
●コンテンツ管理
●商品管理
●カート機能
●ログイン機能
●お問い合わせフォーム
●受注管理
●出荷機能
●顧客管理・問合わせ管理
●入金・請求
●集計・分析
●販促(DM・広告)管理
●在庫機能
●管理機能

大きく分けて「フロント機能」と「バックエンド機能」の2つがあります。これら機能を一から構築する方法を「フルスクラッチ」と呼ばれています。フルスクラッチのほか、次の章で解説するASPやオープンソースなどありますが、いずれもパッケージ化されており自前で構築は不要です。

ECサイトを構築する方法と費用・相場

ECサイトの構築方法は、次の5つの方法があります。

サービス 初期費用 月額費用 カスタマイズ性 サービス例
モール 0円~5万円 0円~5万円 ●楽天市場
●yahooショッピング
●Amazon
ASP 0円~5万円 0円~5万円 ●BASE
●STORES
●makeshop
オープンソース 0円~50万円 0円~50万円 ●EC-CUBE
●Magento
●WordPress
パッケージ 300万円~500万円 数万円~数十万円 ●ecbeing
●ebisumart
●EC-ORANGE
フルスクラッチ 1000万円~ 数万円~数十万円 なし

上記の表は構築コストが低く、パッケージ化されて構築の手間がかからない順で並んでいます。構築が容易なサービスほど初期費用は安く抑えられますが、構築の自由度が低いためオリジナル性を発揮することができません。

ECサイトの規模やビジネスモデルによっては、パッケージやフルスクラッチで構築した方が費用対効果は高いケースもあります。

ECサイト運営で欠かせない9つの業務

ECサイト運営の流れは、大まかに次の9つの業務があります。

  1. 商品企画
  2. 仕入れ・製造
  3. サイト制作・更新管理
  4. プロモーション
  5. 受注処理
  6. 在庫管理
  7. 出荷
  8. 配送
  9. アフターサービス(問い合わせ管理)

ECサイト運営で欠かせない9つの業務

※画像引用:https://www.makeshop.jp/main/know-how/operation/ec-site-operation.html
ECサイトを開店した初期は集客に苦労しますので、フロント業務の「プロモーション」が特に重要となります。

また、BtoCのECサイトでは少量の商品を各個人宛へ発送するため、売れるほどバックエンド業務は多忙となり、在庫管理とフロント業務の連帯は欠かせません。

※ECサイトの運営業務の詳細は次のページをご覧ください。

内部リンク:ECサイト運営完全マニュアル!業務内容や必要なことを初心者向けに解説
https://www.makeshop.jp/main/know-how/operation/ec-site-operation.html

ECサイトを開業するための8つのステップ

ECサイトを開業するには、次のステップで進めましょう。

  1. ECサイトのターゲットとコンセプトを決める
  2. 開業するために必要な許可を得る
  3. ECサイトに必要な機材や場所を用意する
  4. 商品を仕入れる
  5. ECサイトの構築方法を決める(モール・自社サイト)
  6. 決済方法を決める
  7. Webページを作成する
  8. Webページを公開し集客する

ECサイトで販売したい商品やサービスを選ぶ際に、法律的に許可が必要なジャンルがあります。たとえば中古品を売るなら「古物商許可」が必要ですし、食品であれば「営業許可」など。具体的には下記のとおりです。

扱う商品
サービス
関連法律 申請する許可
届出等
許可を申請する
場所
中古品の買い取り・販売 古物営業法 古物商許可 所轄の警察署
生活安全課
食品の販売 食品衛生法 食品衛生法に基づく営業許可 所轄の保健所
健康食品の販売 食品衛生法
医薬品医療機器等法
薬機法
※種類による
医薬品医療機器等法に基づく許可
※種類による
所轄の保健所
各都道府県の薬務課
※種類による
酒類の販売 酒税法 通信販売酒類小売業免許
※ネットショップで2つ以上の都道府県に販売する場合
所轄の税務署
医薬品の販売 医薬品医療機器等法 薬局開設許可
医療品販売許可
特定販売届出
所轄の保健所
各都道府県の薬務課
など
化粧品の製造・販売 医薬品医療機器等法
薬機法
化粧品製造販売許可
※ブランド化粧品を直接輸入販売する場合

医薬部外品製造販売許可
※国内の製造業者や輸入業者からの仕入れの場合は不要

所轄の保健所
各都道府県の薬務課
など

内部リンク:【絶対知るべき】ネットショップ開業に必要な手続き・許可・法律など
https://www.makeshop.jp/main/know-how/opening/opening-request.html
なお、ECサイトの業務工程はたくさんありますが、ほとんどの業務はアウトソーシング可能です。ECサイトの構築や商品撮影をアウトソーシングすることで効率化を図り、通年の固定費を抑えることができます。ECサイトの売上が伸びて軌道に乗った段階で、専任スタッフの雇用や、設備投資をしても遅くはありません。

まとめ

ニューノーマル・ウィズコロナ時代を勝ち抜くために、これまで実店舗のみだった事業者のEC参入が増えてきました。BtoC市場は例年右肩上がりで参入者が増えていますが、町工場や中小企業など、これまでECと関わりが薄かったBtoC市場もDXの動きが見られます。

ECは実店舗に比べて初期投資や運用費用が低く参入しやすいですが、「売れる」ためにはノウハウが不可欠。ECサイトを構築して終わりではありませんので、ときにはプロの知見を得ながら成功させましょう。