- 最終更新日: 2025.11.10
- 公開日:2022.10.21
ECサイトの制作方法を難易度・費用相場で比較!また、失敗しないコツを解説

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EC導入が加速し、今や企業が競争力を保つためには、高機能なECサイトの構築と戦略的な運用が不可欠です。
しかし、特に大規模なエンタープライズ企業においては、「既存の基幹システム(ERPやCRM)とどう連携させるか」「膨大な商品点数とアクセスに耐えうるインフラは何か」「複雑な業務フローを実現できるか」といった、小規模ECにはない特有の課題に直面します。
「自社の複雑な要件を実現する最適な構築方法は何か」「信頼できる開発パートナー(制作会社)はどう選べば良いのか」といった疑問をお持ちのEC担当者様も少なくないでしょう。
本記事では、中規模から大規模(エンタープライズ)のECサイト導入を検討されている担当者様向けに、失敗しないためのECプラットフォームの選び方と、制作会社選びで押さえるべき重要な比較ポイントを徹底解説します。
目次
【エンタープライズ向け】ECサイト制作の主要プラットフォーム比較

ECサイトの構築方法は多岐にわたりますが、企業の規模や目指す売上、必要な機能によって最適な選択肢は大きく異なります。
まずは主要な6つの構築方法(プラットフォーム)の特徴を見てみましょう。特にエンタープライズ企業が検討すべきは、カスタマイズ性の高い「ECパッケージ」以降の4手法です。
- ECモール
- カートASP
- ECパッケージ
- オープンソース
- クラウドEC
- フルスクラッチ
小~中規模向けの手法(カートASP・ECモール)
まず、エンタープライズ向け「ではない」手法を簡潔に解説します。これらは主に小〜中規模事業者に適しており、大規模構築で求められる複雑な要件への対応は困難な場合があります。
カートASP (Application Service Provider)
- 特徴: 月額数千円~数万円で利用できるクラウド型のEC構築サービス。専門知識がなくてもECサイトを構築・運用できます。
- メリット: 低コストかつ短期間(数週間~3ヶ月)で導入可能。サーバー管理が不要。
- デメリット: カスタマイズ性が低い。デザインの制約が多く、外部システムとの詳細な連携には不向きな場合が多い。
- エンタープライズでの用途: 新規事業のテストマーケティングや、期間限定の小規模サイトなど、用途を限定した利用に適しています。
ECモール
- 特徴: Amazonや楽天市場のような大規模なオンラインショッピングモールに出店する形態。
- メリット: モール自体の高い集客力。構築の手間がほぼ不要。
- デメリット: 売上に応じた手数料(ロイヤリティ)が発生するため利益率が下がりやすい。デザインの自由度が極めて低く、ブランディングに不向き。顧客データが自社資産になりにくい。
中~大規模(エンタープライズ)向けの手法 徹底比較
ここからが本題です。年商数億円以上を目指す、あるいは既に達成しているエンタープライズ企業の場合、「システム連携」「独自機能の追加」「大規模トラフィックへの対応」が必須となります。
ここでは、それを実現可能な4つの手法を、エンタープライズ特有の観点(システム連携、ヘッドレス対応、セキュリティ)を加えて比較します。
| 手法 | ECサイト規模 | メリット | デメリット・注意点 | システム連携 (API) | ヘッドレス対応 |
| ECパッケージ | 中~大規模 | 豊富な基本機能。サポート体制が充実。カスタマイズも可能。 | ライセンス費用が高額。定期的なバージョンアップ(老朽化対策)が必須。 | 連携実績は豊富だが、個別開発が必要な場合が多い。 | 対応していないか、限定的。 |
| オープンソース | 小~大規模 | ソースコードが公開されており、カスタマイズの自由度が非常に高い。ライセンス費用が無料。 | セキュリティの脆弱性対策を自社で行う必要がある。開発・保守に高い技術力が必要。 | 自由度は高いが、すべて自社(または委託先)の技術力に依存する。 | 技術的には可能だが、難易度は高い。 |
| クラウドEC | 中~大規模 | システムが自動で最新化される(老朽化しない)。カスタマイズ性と安定性を両立。 | 月額費用は高め。プラットフォームの仕様内でのカスタマイズとなる。 | API連携が前提のサービスが多く、外部連携に強い。 | 対応しているサービスが多い。 |
| フルスクラッチ | 大規模 | 制約が一切なく、完全に独自のシステムをゼロから構築できる。 | 開発費用が数千万円~と極めて高額。開発期間も長期化。保守・運用コストも最大。 | すべてオーダーメイドで構築可能。 | 可能(ヘッドレスで設計するのが一般的)。 |
【最新トレンド】ヘッドレスコマースとは?
上記の比較表で登場した「ヘッドレス」は、近年のエンタープライズECで最も注目される設計思想です。
従来のECシステム(ECパッケージなど)は、ユーザーが見る画面(フロントエンド)と、在庫や注文を管理する裏側(バックエンド)が一体化していました。
ヘッドレスコマースは、このフロントエンドとバックエンドをAPI(Application Programming Interface)で完全に分離します。
ヘッドレスのメリット:
- UI/UXの圧倒的な自由度: バックエンドの制約を受けずに、PCサイト、スマホアプリ、スマートスピーカー、デジタルサイネージなど、あらゆるデバイスに最適化されたデザイン(UI/UX)を自由に開発できます。
- 開発スピードの向上: フロントエンドとバックエンドを別々のチームが並行して開発・改修できるため、施策の実行スピードが上がります。
- 柔軟なシステム連携: バックエンドを「コマース機能の部品(API)」として捉え、CMSやERP、CRMなど他のシステムと柔軟に連携させられます。
ヘッドレスのデメリット:
- 開発コスト: フロントエンドをゼロから構築する必要があるため、初期費用は高額になります。
- 技術的難易度: APIを前提とした高度な設計・開発スキルが求められます。
このヘッドレスコマースを実現しやすいのが、「クラウドEC」や「フルスクラッチ」です。
ECサイト制作の費用相場・サイトオープン目安(エンタープライズ向け)
エンタープライズ向けの構築手法は、そのカスタマイズ性の高さに比例して費用と期間が増大します。
| 手法 | 初期費用(目安) | 月額費用(目安) | オープン目安 |
| ECパッケージ | 500万円~ | 数十万円(保守・運用費) | 6ヶ月~1年 |
| オープンソース | 300万円~(カスタマイズ費) | 数万~数十万円(サーバー・保守費) | 6ヶ月~1年 |
| クラウドEC | 500万円~ | 数十万~数百万円 | 6ヶ月~1年半 |
| フルスクラッチ | 数千万円~数億円 | 数十万~数百万円(保守・インフラ費) | 1年~ |
※上記の費用は、基幹システムとの連携や独自の機能開発を前提とした場合の目安です。
ECサイトは、商品登録、決済・配送設定、システム連携のテストなど、通常のWebサイト制作に加えて多くの準備が必要です。特にエンタープライズの場合は、要件定義とシステム設計に最も時間がかかるため、最低でも6ヶ月以上のプロジェクト期間を見込む必要があります。
なぜ高コストな手法を選ぶのか?エンタープライズEC選定の基準

「カートASPでも年商10億円は可能」という話もありますが、エンタープライズ企業があえて高コストな「クラウドEC」や「フルスクラッチ」を選ぶのには明確な理由があります。
重要な判断基準は、以下の2点に集約されます。
- 数年先の事業拡大に耐えうるか?(スケーラビリティ)
- 基幹システムと連携し、業務全体を効率化できるか?
よくある失敗例は、初期コストを抑えてECパッケージやオープンソースで構築したものの、数年後にアクセス急増や機能追加に対応できず、システムが老朽化してしまうケースです。
ECパッケージやオープンソースは、導入時点の技術をベースにしているため、5~10年後には陳腐化します。その際のリニューアル(乗り換え)には、構築時と同等かそれ以上のコストと時間がかかります。
年商数十億円規模になると、ECサイトは「単なる販売チャネル」ではなく、「企業の基幹システムの一部」として機能させる必要があります。在庫管理(WMS)、顧客情報(CRM)、会計システム(ERP)とリアルタイムで連携し、バックオフィス業務を含めた全体の効率化を図らなければ、事業成長のボトルネックになってしまいます。
だからこそ、API連携に強く、システムが自動更新される「クラウドEC」や、すべてを自社仕様で構築できる「フルスクラッチ」が、長期的な視点で選ばれるのです。
ECサイト制作会社の失敗しない選び方・比較のチェックポイント

エンタープライズECの成功は、開発パートナーである制作会社の選定にかかっていると言っても過言ではありません。
以下のチェックポイントで、自社の事業を深く理解し、技術的に実現できる会社かを見極めましょう。
1. ECサイト運用とWEBマーケティングに精通しているか
ECサイトは作って終わりではありません。クーポン発行、販売管理、広告運用、SEO対策など、「売るため」のノウハウを持っている会社を選びましょう。過去の実績(特に同業界・同規模)の提示を求めてください。
2. エンタープライズ向けの技術的要件に対応できるか
ここが最も重要です。以下の点を必ず確認してください。
- 基幹システム(ERP/CRM/WMS)との連携実績は豊富か?
自社が利用しているシステムとの連携実績があれば最適です。 - 大規模トラフィックに耐えうるインフラ設計・運用実績があるか?
セール時などのアクセス集中をどう捌いてきたか、具体的な事例を聞きましょう。 - ヘッドレスコマースの開発実績があるか?
クラウドECやフルスクラッチを検討する場合、APIを前提とした開発スキルは必須です。 - セキュリティ要件(PCI DSS準拠など)に対応できるか?
個人情報や決済情報を扱うため、高いセキュリティ基準での構築・運用経験が求められます。
3. 「安さ」だけを売りにしている会社は要注意
エンタープライズの複雑な要件定義や開発には、相応の工数がかかります。極端に安い見積もりは、「必要な機能が不足している」「テストが不十分」「運用サポートが含まれていない」可能性があります。見積もり内容を精査し、コストとサービス内容のバランスを見極めましょう。
4. 納品後のサポート体制と財務基盤
ECサイトは継続的な改善が必要です。トラブル時の対応速度、機能追加の相談体制など、長期的なパートナーシップが築けるかを確認します。また、突然倒産するリスクを避けるため、会社の設立年数や財務基盤の安定性もチェックしましょう。
売れるECサイトを制作するにはユーザビリティの理解は必須

ECサイトを制作すれば即座に売上が上がるわけではありません。売上を伸ばすには「集客」が欠かせませんが、まずはサイトに訪れたユーザーが迷わず購入できる「ユーザビリティ(利便性)」の向上が最優先です。
ユーザビリティを高めるには、ユーザー行動を分析し、問い合わせやアンケートの声を収集・整理し、改善施策に落とし込みます。この「実行→検証→評価」のサイクルを回し続けることが成功の鍵です。
特に、ユーザーのことを最も理解しているのは、日々お客様と接している御社のスタッフです。スタッフから得た「現場の声(課題やアイデア)」を制作会社と共有し、二人三脚でサイトを育てていく意識が重要です。
ECサイトの集客は継続的な努力が欠かせない
どれだけ優れたデザインや機能のサイトでも、集客戦略がなければ売上は伸びません。
- SEO対策(検索エンジン最適化)
- Web広告(リスティング広告、ディスプレイ広告)
- SNS運用
- メルマガ
これらの施策を顧客層に応じて組み合わせ、Googleアナリティクスなどでデータを分析し、改善を繰り返す継続的な努力が不可欠です。
GMOメイクショップの提供するエンタープライズ向けECプラットフォーム
GMOメイクショップでは、小規模からエンタープライズまで対応するECプラットフォームを提供しています。ここでは特に中~大規模向けのプランをご紹介します。
| サービス名 | 種別 | 規模 | 特徴・メリット | 初期費用(目安) |
| makeshopエンタープライズ | カートASP(カスタマイズ) | 中規模 | 高機能なmakeshopをベースに、基幹システム連携や専用サーバー構築に対応。コストパフォーマンスに優れる。 | 要お見積もり |
| GMOクラウドEC | クラウドEC | 中〜大規模 | ヘッドレスコマース採用。システムが自動更新され、UI/UXをフルカスタマイズ可能。API連携に強い。 | 1千万〜6千万円 |
makeshopエンタープライズ

「makeshopエンタープライズ」は、国内ECカートシステムにおいて長年トップクラスの流通額を誇る「makeshop by GMO」をベースに、エンタープライズ企業の要件に対応するプランです。基幹システムとの連携や専用サーバーの構築、オムニチャネル対応など、通常のカートASPでは不可能なカスタマイズを実現します。ベース機能が確立されているため、コストパフォーマンス高く中規模ECを構築したい場合に最適です。
中・大規模向けEC構築プラットフォーム「GMOクラウドEC」

「GMOクラウドEC」は、最新アーキテクチャ「ヘッドレスコマース」を採用したクラウドECプラットフォームです。
最大の特徴は、システムが常に最新の状態に保たれる「クラウドのメリット」と、フルオーダーメイドに対応できる「カスタマイズ性」を両立している点です。
フロントエンドとバックエンドが分離しているため、プラットフォームの制約を受けずにUI/UXを自由に開発・改善できます。また、複数のサイトやブランドを一つのバックエンドで管理する「モール型ECサイト」の構築もスムーズです。将来的な事業拡大を見据え、柔軟性の高いEC基盤を求める企業に最適です。
成功するためのEC制作のポイントまとめ
「オシャレでかっこいいECサイト」が、必ずしも「売れるECサイト」ではありません。エンタープライズECの成功には、見た目以上に、「商品力」「高いユーザビリティ」「業務効率化(システム連携)」「安心感(セキュリティと安定稼働)」といった実用的な要素が不可欠です。
ECサイトの制作を外部に依頼する際も、丸投げは禁物です。顧客のニーズを最も理解しているのは、日々お客様と接している御社のスタッフに他なりません。
現場の課題や要望を明確な仕様にまとめることが、無駄な開発費用を抑え、本当に価値のあるECサイトを構築する第一歩となります。本記事で紹介した比較ポイントやチェックリストを参考に、御社の事業を成功に導く最適なEC構築を実現してください。











