• 最終更新日: 2022.07.28
  • 公開日:2022.07.28

ユニファイド・コマースとは? 顧客が取れる選択肢が増えたからこそ求められる統合された商取引

ユニファイド・コマースとは? 顧客が取れる選択肢が増えたからこそ求められる統合された商取引
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ECサイトの発達、コロナの影響からビジネスの現場でも様々な用語や戦略、概念が作り出されました。ユニファイド・コマースも、そのうちの一つです。この記事ではユニファイドコマースの意味、意義、実態について解説していきます。

ユニファイド・コマースの意味とは?

ユニファイド・コマース(Unified Commerce)とはそもそもどういう意味なのでしょうか?

ユニファイド・コマースは直訳すると「統一された商取引」です。
それでは統一とは何のことを指すのでしょう。結論から言うと、特定の顧客のオフライン、オンライン、アプリ、webなどの様々な状況における事業者と顧客とのチャネル(接点)を統一して分析することを指します。

顧客に対する分析を各チャネルごとに個別に見るのではなく、統一して一元化することによって、様々な角度から顧客理解を深めていくのがユニファイドコマースなのです。

もう少し具体的に考えていきましょう。

例えばAさんは週3度ECサイトを利用してBOPISで商品を受け取ります。
また週に2度はスーパーのアプリケーションから注文した商品を自宅配送してもらい、それ以外の買い物は直接衝動的に実店舗で行います。
これらAさんの行動はオフライン、オンラインをまたがっており、決済方法も様々です。

このAさんの行動のような、顧客一人一人の情報を統一・分析するOne To Oneマーケティングがユニファイドコマースです。

※BOPISについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

ユニファイド・コマースと似たような使われ方される言葉として「o2o」と「マルチチャネル」、「オムニチャネル」などがあります。

それぞれ簡単に説明していきます。

ユニファイド・コマースと似た言葉

「O2O」

「Online to Offline」の略で、オンラインでのチャネルを持つ顧客に対して実店舗で利用できるクーポンなどを発行して、実際に足を運んでもらうことを目指します。

「OMO」

「Online Merges with Offline」の略で、O2Oがオンラインからオフラインの利用を目指すものに対し、OMOはオンライン利用とオフライン利用を分離せず、どちらも相互に作用しあい、顧客にとってのオンラインとオフラインの垣根を取り払うことを目的としています。

「マルチチャネル」

マルチというように顧客と様々な接点を持って、顧客が利用するサービスの選択肢をより多く提供することを目指します。ただしこれらのチャネルは独立して動いているだけで連携していません。

「オムニチャネル」

オムニとは、「全ての」という意味であり、オムニチャネルとは顧客との全ての接点のことを指します。上記のマルチチャネルが統合されて、顧客が好きな時に好きな決済方法で、好きな場所でサービスを利用できることを目指すのがオムニチャネルです。それぞれのチャネルは連携されており、オフライン、オンライン、アプリ、web問わず様々なアプローチが統合されています。

こう聞くとオムニチャネルとユニファイド・コマースは非常に似ている概念のようです。それではこの二つの違いとは何なのでしょうか。

ユニファイド・コマースとオムニチャネルの違い

結論としてオムニチャネルが進化した概念がユニファイド・コマースです。

オムニチャネルは顧客が企業のサービスにおける全てのチャネルを通して売上を向上させることを狙うのに対して、ユニファイド・コマースはリアルタイムに顧客の体験全てを観測して、CXを向上します。

参考URL:https://blog.qivos.com/unified-commerce-the-evolution-of-omni-channel/

リアルタイムに観測される事実に基づいたOne To Oneマーケティング

リアルタイムに観測されるOne To Oneマーケティングがユニファイド・コマースの真骨頂です。

本来広告というものは予測されるペルソナを分析してセグメントを割り出し、そこに対して効果的な宣伝を打つといった施策が一般的でした。現在でも検索エンジンと連動した動画やwebページなどのアドセンス広告は、その年齢や地域など様々に分類されたセグメントに対して最適化され、ある一定の精度で広告効果を期待できます。

しかしそれは予測の範囲を越えるものではありません。

対してユニファイド・コマースで出来ることは、セグメント単位に大まかに適合するプロモーションを行うのではなく、顧客一人一人の行動実態に即した最適な販売促進を行うことが可能です。これらは予測ではなくリアルタイムに観測される事実を根拠としたOne To Oneマーケティングです。顧客の実像を掴み、CXの向上により顧客一人一人のニーズを確実に捉えることが期待されています。

ユニファイド・コマースの導入について

ユニファイド・コマースの導入のためには、オンライン/オフラインに限らず、ECサイトを始めとしたwebサイト、アプリ、実店舗における会員カードの利用履歴やPOSなどの購買履歴などの全てのチャネルによる情報収集が必要です。

これらの集積されたデータをツールによって分析し、顧客のニーズに合った施策を実施することでユニファイド・コマースが実現します。

ただし問題点もあります。

まず第一に顧客一人一人を見ていくのでその施策が多様化する可能性が考えられます。ニーズがより多様化していく中で、一体どの施策が効果的なのかを見極めるために、数字を分析して施策化した後で、どのようにその施策の効果を測るのかも含めて準備しなければなりません。

そして効率的で確実性の高いデータの収集のため、各チャネルも整備され、顧客の動きを観察できる仕組み作りが重要になっていきます。

ツールの操作やアップデートも必要になりますし、施策を現場に落とし込むための活用方法も問題となってくるでしょう。ユニファイド・コマースは全てのチャネルを統合して連動するので、ビジネスのデザインが一貫して整理されていなければ期待する効果を望めません。

では今から導入する事業者はどうすればいいのでしょうか?

まずは顧客から収集したデータを統合し、可視化する仕組みを導入。つまり統合データベースを分析できるように、仕組みづくりやツール選びを行います。

それが実現したあとに顧客一人一人にパーソナライズされたマーケティングを行います。ここで重要なのはCXの向上であり、売上はその次であることを認識しなければなりません。

ユニファイド・コマースは時代の変化を感じ取る

例えばコロナ化において、オフラインのサービスがオンラインにシームレスに移行することが一つの課題でした。

BOPISなどの施策も小売業が、コロナにおいて制限されたサービスの利用体験をシームレスに提供するために行われました。

これはDX戦略などの対応施策が先に必要ではありましたが、アプリ化やECサイトの整備などを進めていた事業者が優位だったのは言うまでもありません。時代は急激な変化を経験しました。チャネルにおける予測されたマーケティングではなく、統合したデータベースで顧客の「事実」と触れ合うことが、顧客を取り巻く環境の変化を敏感に感じ取り、サービスを進化させるためのソナーの役割を果たします。

いずれにしても顧客の実像を事業者が把握しそれらを集約して分析することは今後の激化していくビジネス競争を勝ち抜く一つの手がかりとなるでしょう。

まとめ

ユニファイド・コマースは顧客がサービスと触れあう全ての接点を統合しデータベース化して分析することで、顧客一人一人の行動という事実に基づいた(パーソナライズされた)マーケティングを行うことを目的としています。オムニチャネルから進化した概念であり、多様化するニーズや消費活動に対して、売上ではなく、よりよい体験(CX)を目指す施策を打ち出すために導入するのがユニファイド・コマースです。

今後もマーケティングの概念は進化していくことが予想されますが、顧客一人一人のニーズに即したマーケティングという、本来理想的なマーケティングである反面、非効率なプロモーションを、技術の発達によって目指せるようになった現代において、この方向性はしばらく維持されていくのかもしれません。

理想的なマーケティングが実現された世界とは、顧客自身ですら予想しえなかった需要をマーケティングが呼び起こし、人々の生活が豊かになることを目指すものであると言えるでしょう。ユニファイド・コマースはその道程における現時点での最先端にある概念です。

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